部門横断で「同じデータ」を見る文化をどう作るか:RevOpsにおけるデータ統合の課題と解決策

 2025.07.11
編集長
谷川 雄亮
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なぜ、ツールを導入しても「データに基づいた意思決定」は進まないのか? MA、SFA、CRM…多くの企業がデータ活用の重要性を認識し、様々なツールを導入しています。しかし、その一方で「データが部門ごとに散在し、結局Excelでの手集計から抜け出せない」「データはあっても、それを見て議論する文化がない」といった、より根深い課題に直面しているのではないでしょうか。 「データのサイロ化」と「文化の不在」。これこそが、多くの企業でデータドリブンな意思決定を阻む二大要因です。 この記事では、この根深い課題を解決するための戦略的アプローチである「RevOps(レベニューオペレーション)」の観点から、データ統合の具体的な道筋と、それを支える「文化」の作り方について、実践的なステップで解説します。

目次

    すべてはここから始まる:データサイロがもたらす「見えないコスト」

    データサイロ、つまり「データの分断」は、各部門が業務を最適化しようと努力した結果として生まれる、いわば「善意の悲劇」です。マーケティングはMAを、営業はSFAをそれぞれ最適に活用しようとした結果、顧客に関する重要なデータが、部門ごとに異なるシステムへ散在してしまいます。

    この分断された顧客像が、知らず知らずのうちにビジネスへ「見えないコスト」を課し始めます。

    一貫性のない顧客体験

    部門をまたぐたびに、顧客が同じ説明を繰り返す羽目になり、顧客満足度が低下する。

    機会損失の発生

    「どの施策が本当に優良顧客に繋がったのか」が不明確なまま、効果の薄い施策に投資を続けてしまう。

    不正確な売上予測

    精度の低い見込みに振り回され、経営判断のスピードと質が劣化する。

    分断を乗り越え、データを「共通言語」にする

    これらの課題を根本から解決するアプローチが、RevOpsです。RevOpsの目的は、単にツールを繋ぐことではありません。組織の共通言語として「データ」を位置付け、「収益の全体最適」という唯一のゴールに向かう体制を構築することにあります。

    その中核をなすのが、すべての顧客データを一元化する「信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth)」です。これにより、360度の顧客ビューが実現し、マーケティングROIの正確な把握や、LTVの高い顧客層の特定など、データに基づいた質の高い意思決定が可能になります。

    RevOpsによるデータ統合の全体像を知る

    この章を読んで、「まさに自社の課題だ」「データ統合の重要性は分かったが、より具体的な進め方を知りたい」と感じた方も多いのではないでしょうか。
    RevOps実現に向けたデータ統合の進め方をまとめた、より詳細な資料をご用意しています。まずは情報収集から始めたい方は、ぜひご活用ください。

    データ統合を実現する「技術」の3ステップ

    まずは、データ統合を実現するための技術的なステップを3段階でご紹介します。これは文化醸成の土台となる重要な基盤です。

    Step1:データを集める器を作る【データ基盤】

    社内に散在するデータを一箇所に集約するための「器」となるデータ基盤(データレイク、データウェアハウス等)を構築します。

    Step2:データを繋ぐ架け橋をかける【ETLツール】

    各SaaSからデータ基盤へと自動的にデータを集約するための「架け橋」として、ETLツール(例:TROCCO®など)を活用します。

    Step3:データを見える化する【BIツール】

    集約・整理されたデータをグラフなどで可視化するBIツールを用い、誰もが直感的に理解できる全社共通のダッシュボードを構築します。

    最も重要で、最も難しい課題:「同じデータを見る文化」の醸成

    しかし、データ基盤を構築するだけでは不十分です。真の変革は、部門間に根付いた「意識の壁」を壊し、「同じデータを見て、建設的に対話する文化」をいかにして作るかにかかっています。

    【解決策】対話と当事者意識を生み出す「ビジネスプロセスマップ・ワークショップ」

    この文化醸成の、具体的で強力な第一歩となるのが、「ビジネスプロセスマップ・ワークショップ」です。

    マーケティング、営業、CSなど、普段は交わることの少ない担当者が一堂に会し、顧客の全プロセスを一枚の「マップ」として可視化します。これにより、各々が自分の業務が他部門や最終的な顧客体験にどう影響しているかを「自分ごと」として理解し、当事者意識が生まれます。

    この俯瞰的なプロセス図は、部門の垣根を越えた「共通言語」となり、データに基づいた建設的な対話の土台を築きます。これは、トップダウンの指示だけでは決して生まれない、現場からのボトムアップによる改善文化の種を蒔く活動へとつながります。

    まずは「対話の場」づくりから始めませんか?

    データ基盤の構築と並行して、あるいはそれ以上に、部門間の「意識の壁」を越える仕掛けが重要です。
    あやとりでは、まず関係者で集まり、対話を通じて現状の業務プロセスを可視化する「ビジネスプロセスマップ作成ワークショップ」をご提供しています。データ統合プロジェクトの前に、組織の共通認識を醸成する「対話の場」を設けることが、成功への最短距離です。

    まとめ:データ統合は、「文化」と「技術」の両輪で推進する

    「データのサイロ化」は、もはや単なる情報システム部門の課題ではなく、企業の競争力を左右する経営課題です。

    そして、その解決は「技術」だけでは決して成し遂げられません。全社で「同じデータを見る文化」という土壌があって初めて、データ基盤という「技術」は真価を発揮します。
    この両輪を回すことこそが、RevOpsにおけるデータ統合プロジェクトの成功の鍵となります。
    課題解決の第一歩は、現状のデータと、それを扱う業務プロセスの「見える化」から始まります。

    専門家と共に、変革の全体像を描く

    貴社の現状を客観的に分析し、データ統合という技術的な課題から、それを支える文化醸成まで、RevOps実現の道のりを一貫して伴走します。何から始めるべきか、専門コンサルタントが丁寧にヒアリングし、貴社に最適な構想をご提案します。

    編集長
    谷川 雄亮

    この記事の監修者

    CMOとしてウェブマーケティングの大規模プロジェクトを伴走しています。その経験をもとに、ウェブ担当者としての仕事を体系化した「ウェブマネジメント講座」開発し、講師をしています。実務担当者から経営層まで、100社以上の企業に受講いただきました。ウェブマネジメント・アカデミーでは、みなさまが抱えている課題を一緒に解決できるようにサポートします。

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