RevOps(レベニューオペレーション)とは?注目される理由と効果

 2025.07.08
編集長
谷川 雄亮
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現代のビジネス環境において、企業が持続的な成長を実現するためには、顧客との関係構築から売上創出、そしてその後の継続的な価値提供までを一貫して管理する「仕組み」が不可欠です。
市場の停滞や人手不足、さらには旧来の「勘・経験・度胸」に頼る営業手法が根強く残ることで、変革の必要性を感じている方も多いのではないでしょうか。
「顧客への対応が一貫していない」「部門間の連携がうまくいかない」「データはたくさんあるのに活用しきれていない」――もし御社がこのような課題を抱えているのであれば、今、注目されているRevOps(レベニューオペレーション)の考え方が、その解決の糸口となるかもしれません。
ここでは、RevOpsがどのようなものなのか、そしてなぜ現代のビジネスにおいてその重要性が高まっているのかを分かりやすく解説します。

目次

    部門間の「見えない壁」が、企業の成長を妨げる?

    多くの企業では、マーケティング、営業、カスタマーサクセス(CS)といった収益に関わる各部門が、それぞれ独自の目標(KPI)やツール、プロセスを持って活動しています。一見効率的に見えるこの「部門最適」のアプローチは、気づかぬうちに部門間に「見えない壁」を生み出し、情報の分断(サイロ化)を引き起こすことがあります。

    サイロ化がもたらす深刻な問題

    顧客体験の断絶

    部門が独立して顧客に対応するため、顧客は一貫性のない体験を強いられ、企業への信頼が低下する可能性があります。

    データの分断と可視化の欠如

    MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)などの便利なツールが普及した一方で、部門ごとに個別に導入された結果、顧客データが散在し、組織全体で有効活用できていない状況が生まれます。これにより、データに基づいた迅速な意思決定が阻害されます。

    部門間の連携不足と低い生産性

    情報共有や確認の手間、重複作業が増加し、業務効率が悪化します。結果として、本来の営業活動に割ける時間が圧迫され、組織全体の生産性が低下します。

    重複コストとリスクの増加

    ツールやシステムが重複して導入されることで、無駄なコストが発生したり、情報漏洩などのリスクが高まったりします。

    こうした部門間の「見えない壁や情報の分断」は、気づかぬうちに組織の体力を奪い、企業の成長を大きく妨げる要因となっています。

    RevOps(レベニューオペレーション)は、企業のなかで起こりがちなこのような課題を解決し、マーケティング・営業・CSをデータで繋ぐことで、組織全体の収益を最大化するための仕組みとして注目されています。

    RevOps(レベニューオペレーション)とは?

    RevOpsの定義

    RevOps(レベニューオペレーション)とは、「Revenue(収益)」と「Operations(業務)」を組み合わせた言葉です。企業の収益最大化を目指し、マーケティング、営業(インサイドセールス含む)、カスタマーサクセスといった収益に関わる全部門の活動、データ、テクノロジーを横断的に統合し、管理・最適化するための仕組みや戦略を指します。

    RevOpsの目的

    RevOpsは、各部門が「LTV(顧客生涯価値)の最大化」や「収益成長率」といった会社全体の共通目標を共有し、データとテクノロジーを基盤として、顧客が製品やサービスを認知してから購入し、継続利用するまでの一連のプロセス(レベニュープロセス)を統合・最適化していきます。

    これにより、組織全体の収益を最大化し、持続的かつ再現性のある成長を実現することを目指します。

    これまでの部門間連携(営業・マーケティング連携)との違い

    例えば、これまでは、マーケティング部門は「リード獲得数」、営業部門は「商談化数・受注件数」、CS部門は「問い合わせ対応件数」など、それぞれの部門に最適化されたKPI(重要業績評価指標)を追いかけるのが一般的でした。

    この部分最適は、一見効率的に見えますが、結果として部門間の断絶を生む大きな原因になることもありました。

    それに対してRevOpsは、これらすべての部門が「LTV(顧客生涯価値)の最大化」や「収益成長率」といった、会社全体の収益に繋がる目標を共有していきます。

    そして、その共通目標を達成するために、データとテクノロジーを基盤として、顧客が商品やサービスを認知してから購入し、継続利用するまでの一連のプロセス(オペレーション)を統合・最適化していくのです。

    RevOpsによるデータとプロセスの統合効果

    顧客データを一元化し、部門を横断して分析・活用することで、「どのマーケティング施策が優良顧客に繋がったのか」「営業が失注した顧客は、なぜ解約に至ったのか」「CSに寄せられる要望には、どんなアップセルのヒントが隠されているのか」といった、これまで見えなかったインサイトが明らかになります。

    RevOpsとは、こうしたデータに基づいたアプローチによって部門間の壁を取り払い、顧客のライフサイクル全体で一貫した優れた体験を提供することで、安定的かつ持続的な収益成長を目指す戦略そのものなのです。

    なぜ今、RevOpsが注目されるのか?

    RevOpsは、一部の先進的な企業だけが取り組む特殊なものではなく、現代のビジネス環境が直面している構造的な変化からその重要性が高まっています。

    その背景には、大きく分けて3つの変化が挙げられます。

    1:顧客行動の変化とCX(顧客体験)の重要性の高まり

    かつて、顧客が製品やサービスの情報を得る手段は、企業の営業担当者からの説明やパンフレットが中心でした。

    しかし現在、製品やサービス購入のために参考にする情報源でもっとも多いのは「企業のWebサイト」です。 (引用:トライベック・ブランド戦略研究所『BtoBサイト調査 2024』 

    これは、顧客が企業のWebサイトや広告(マーケティング)に触れた瞬間から、「顧客体験(CX)」が始まっていることを意味します。

    したがって、顧客の購買プロセス全体で一貫した質の高い体験を提供するためには、部門の壁を越えた連携が不可欠になります。

    2:ビジネスモデルの変化(サブスクリプションの台頭)

    SaaSに代表されるサブスクリプション型のビジネスが市場の主流になりつつあることも、RevOpsが求められる大きな理由です。

    従来の「売り切り」モデルでは、商品を売った時点がゴールでした。しかし、サブスクリプションモデルでは、顧客に契約してもらうことはスタート地点に過ぎず、いかに長くサービスを使い続けてもらうか、つまり「LTV(顧客生涯価値)」を最大化できるかが事業成長の鍵を握ります。

    公私ともにサブスクリプション型のサービスに慣れてきている現在においては、LTVを向上させるには、営業が契約を獲得した後の、カスタマーサクセスによる手厚い活用支援や、顧客の声に基づいた継続的なサービス改善が極めて重要です。

    そのためには、マーケティングから営業、CSまでが一体となって顧客を長期的に支えるRevOpsの考え方が不可欠となるのです。

    3:テクノロジーの進化と「データのサイロ化」という新たな課題

    この10年で、MA、SFA、CRMといった便利なテクノロジーが普及し、多くの企業で導入が進みました。これらのツールは各部門の業務を効率化しましたが、一方で、部門ごとに最適化されたツールを個別に導入した結果、顧客に関する重要なデータが各システムに分散し、組織全体で活用できない「データのサイロ化」という新たな課題も生み出しています。点在するデータを繋ぎ合わせ、真のビジネス資産に変えるために、今まさにRevOpsが求められているのです。

    RevOpsがもたらす具体的な効果

    RevOpsの導入は、部門間の連携強化、データ活用の最適化、業務プロセスの効率化を実現し、事業成長の加速に貢献します。

    顧客側で得られるメリット

    一貫性のある顧客体験が提供される

    RevOpsによって部門横断で顧客データが一元管理され、共有されるため、顧客は異なる部門とやり取りする際にも、同じ情報を何度も伝える必要がなくなります。 これにより、「たらい回し」や情報伝達ミスがなくなり、どの担当者が対応しても状況や背景が深く理解され、一貫性のあるパーソナライズされた対応が可能になります。

    迅速かつ適切な対応を受けられる

    データの一元化とプロセスの標準化が進むことで、顧客からの問い合わせや要望に対する対応スピードが向上します。RevOpsはデータに基づいた意思決定を迅速かつ正確に行える環境を整備するため、市場の変化にも柔軟に対応できるようになります。

    ニーズに即した提案やサポートを受けられる

    顧客の行動履歴や購買履歴、サポートへの問い合わせ履歴など、あらゆる情報が一元管理されるため、顧客の個別ニーズに合った最適な提案やフォローアップが可能になります。

    これにより、顧客エンゲージメントが強化され、長期的なLTVの向上に繋がります。

    自社側で得られるメリット

    部門間連携の効率化による業務負荷の軽減

    RevOpsによって、マーケティングから営業、カスタマーサクセスまでのプロセスが統一され、情報の受け渡しが円滑になります。これにより、情報共有や確認の手間、手作業でのデータ転記といった無駄な業務が削減され、重複作業やミスが大幅に減少します。

    結果として、従業員がより戦略的で価値の高い業務に集中できるようになります。

    データに基づく意思決定の高速化、戦略や施策の精度向上

    RevOpsは「唯一の正確な情報源 (Single Source of Truth)」を確立することで、勘や経験に頼るのではなく、データに基づいた的確な判断ができるようになります。

    これにより、ボトルネックを早期に発見し、改善サイクルを加速させることができます。

    部門の垣根を越えて「同じデータが共通言語」となることで、正確でリアルタイムなデータに基づいた意思決定が可能になるため、戦略立案や施策実行がスムーズになります。

    KPI達成に向けた目標・成果の可視化

    RevOpsでは、部門を横断する共通のKPIが設定され、売上貢献までのプロセスが明確になります。自分の仕事が全体の収益にどのように寄与しているのかが可視化されるため、従業員は自分の仕事の意義や影響を実感しやすくなり、モチベーションの向上にも繋がります。属人的な営業手法から脱却し、組織として安定して成果を出す仕組みを構築できます。

    RevOps実現への第一歩

    それでは、実際にRevOps実現にむけ、何をどのように動かしたらいいのでしょうか?

    RevOpsは、ただ新しいツールを導入したり、組織図を変えたりするだけでは成功しません。成功への確実な第一歩は、まず「なぜRevOpsが必要なのか?」「何のために取り組むのか?」といった目的を明確にし、全体構想を策定することです。

    RevOps構想策定(RevOps体制実現ロードマップ策定)の流れ

    RevOpsは壮大なプロジェクトですが、段階を踏んで進めることで、貴社の収益構造を根本から強化し、持続的な成長を実現する強力なドライバーとなるでしょう。

    「現状の業務プロセスはどうなっているのか?」「どこに課題があるのか?」「どのような状態を目指すべきなのか?」これらを客観的に整理し、関係者全員が納得できる「成功への設計図」を描くことが、RevOps実現に向けた最初の、そして最も重要なステップとなります。

    「顧客の変化」「ビジネスの変化」「テクノロジーの変化」という大きな流れの中で、このRevOpsの考え方は、これからの企業にとって「新しい当たり前」となっていくでしょう。

    RevOps構想策定プラン

    RevOps実現に向けた構想策定を支援します

    あやとりの「RevOps構想策定プラン」は、マーケティング・営業・CSなど収益に関わる全部門のデータを統合し、収益最大化を支援します。

    特に、徹底的なビジネスプロセス可視化(ビジネスプロセスマップ活用)と、部門横断のRevOps組織づくりを重視。共通データに基づく意思決定を習慣化することで、御社の安定的成長に貢献します。

    編集長
    谷川 雄亮

    この記事の監修者

    CMOとしてウェブマーケティングの大規模プロジェクトを伴走しています。その経験をもとに、ウェブ担当者としての仕事を体系化した「ウェブマネジメント講座」開発し、講師をしています。実務担当者から経営層まで、100社以上の企業に受講いただきました。ウェブマネジメント・アカデミーでは、みなさまが抱えている課題を一緒に解決できるようにサポートします。

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