カスタマージャーニーマップは古い?弱点を解消するより効果的なフレームワークとは
カスタマージャーニーマップは、顧客が購買に至るまでの道すじを見える化したもので、顧客理解のためのマーケティング手法として知られています。 しかし、その一方で「カスタマージャーニーは古い手法である」とか「つくってみたものの有効に活用できない」といわれることがあります。なぜでしょうか? 本記事では、カスタマージャーニーマップの弱点を補い、より効果的に顧客起点でマーケティング施策を整理する方法をご紹介します。
近年のデジタルマーケティングにおいては、顧客視点でインサイトを深く理解し、多様化した複数のチャネルを通じて必要な情報を必要なタイミングで顧客に提供することが極めて重要です。
ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成することは、見込み顧客に自社の商品・サービスを購入・利用してもらい、自社(商品・サービス)のファンとなってもらうための施策を検討することに役立ちます。
しかし、その一方で「カスタマージャーニーは古い手法である」とか「つくってみたものの有効に活用できない」といわれることがあります。それはなぜでしょうか?
カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップは、顧客が購買に至るまでの道すじを見える化したもので、顧客理解のためのマーケティング手法として知られています。横軸には「認知」「理解」「検討」「商談」などの購買プロセスの各ステージをまとめ、縦軸には「顧客心理・顧客行動」「タッチポイント」「課題・要望」「具体的な施策」をまとめます。
カスタマージャーニーマップを作成することは、見込み顧客に自社の商品・サービスを購入・利用してもらい、自社(商品・サービス)のファンとなってもらうための施策を検討することに役立ちます。
しかし、その一方で「カスタマージャーニーは古い手法である」とか「つくってみたものの有効に活用できない」といわれることがあります。
カスタマージャーニーマップの弱点
では、なぜカスタマージャーニーが「古い」とか「うまく活用できない」といわれるのでしょうか。
ここでは、3つの理由を紹介します。
弱点①:実際は意思決定に関与する顧客はひとりでないことが多い
カスタマージャーニーマップでは、特定の「ひとりの顧客」を想定して意思決定プロセスを可視化します。
しかし、特定のひとりだけで、意思決定プロセスのすべてが完結するのは、ごく一部の商材に限られます。
例えば、家やクルマといったものを買うときは家族のもたらす影響が大きいです。製造業などのBtoB企業においては、設計担当・開発担当・資材担当・工場長・購買担当・法務担当・社長など、異なる立場のステークホルダーの稟議プロセスを通過して、初めて購買意思決定や利用開始に至ります。また、「商社」や「卸売会社」などが顧客と自社のあいだに深く関与することもあります。
そのため、これらの顧客間での関わり合いも考慮したアプローチ策を考慮しなければ、顧客行動の実態から離れたマーケティング施策になってしまいます。
弱点②:顧客に向き合う「自社側各部門の関わりあい」が表現できない
カスタマージャーニーマップでは、あくまでも「顧客」を主軸に置き、顧客のタッチポイントを時系列で整理していきます。
これは、顧客視点を徹底するという意味ではとても重要なことですが、もうひとつの主役である「自社側の各部署の活動」がないがしろになってしまいます。
自社側の各部門の活動を整理してどのように影響しあっているかを考慮することなしに、デジタル媒体だけをテコ入れしようとすると「媒体がひとりあるき」してしまい、部門間での活動に分断やあつれきが生まれてしまうリスクにもなります。
弱点③:「新規顧客の認知獲得から購買決定」までに可視化対象が偏っている
人口減の近年においては、既存顧客へのマーケティングや購買後の「カスタマーサクセス」の重要度が高くなってきています。
カスタマージャーニーマップは、主には製品やサービスをまだ知らない新規顧客が、製品やサービスを認知してから購買に至るまでの情報接点プロセスに焦点が当てられるため、その先の顧客との関わり合い方がうまく表現できません。
カスタマージャーニーマップの弱点を補う、より効果的なフレームワークとは?
それでは、カスタマージャーニーマップのこれらの弱点を補い、より効果的に顧客起点でのマーケティング施策を整理するにはどうしたらよいでしょうか?
そこでおすすめするのが「ビジネスプロセスマップ」というフレームワークです。
ビジネスプロセスマップとは
ビジネスプロセスマップとは、「顧客の行動シナリオ(意思決定やサービス利用に関わる複数の)」と「自社の各部門業務(や関連システム)」の両面から事業活動やサービスの流れを1枚の図にまとめたものです。
ビジネスプロセスマップというフレーム自体は一般名称ですが、今回ご紹介するビジネスプロセスマップは、実際に筆者が多種多様な業種のデジタルマーケティングプロジェクトに携わるなかで、カスタマージャーニーマップを使って取り組んでみたものの行き詰まった際に試行錯誤をして生み出した独自構成のフレームワークです。
カスタマージャーニーマップと比べた3つの特長
ビジネスプロセスマップは、従来型のカスタマージャーニーマップと比べて、次のような特長があります。
特長①:複数の「顧客」の関わり合いを表現できる
ビジネスプロセスマップの上半分は「顧客」の行動シナリオを時系列で表現します。ここはカスタマージャーにマップと似ているところです。
しかし、異なるのは「描く対象顧客の数」です。ビジネスプロセスマップでは、立場の異なる複数の顧客層が描く対象となります。登場人物は業種業態やビジネスモデルの特性に合わせて全く異なるため、「ステークホルダーマップ」を描いて縦軸の設計をすることが重要です。これにより、意思決定に影響を与える顧客間の関わり合い方も考慮して、改善策を検討することにも役立てられます。
異なる立場の顧客どうしの関わり合いを表現した構成例
特長②:「顧客」に対する自社や協力者の活動も組織横断的に整理できる
ビジネスプロセスマップの下半分は「自社」の活動内容を時系列で表現します。
顧客行動に寄り添うかたちで、自社各部門がどのタイミングでどのようなことをおこなっているのかを可視化することで、顧客行動に好影響を与えていない無駄な活動や、やり方に問題のある活動を整理することや、部門間の連携を深める施策を検討することにつながります。
業種業態によっては、自社の各部門だけでなく「メーカーと販売代理店」など、協力会社との関係性も可視化することで、より連携を深める施策検討につなげることもあります。
自社や協力会社の各部門の関わり合いを表現した構成例
特長③:事業の流れをより広範囲に俯瞰できる
ビジネスプロセスマップは、まさに言葉の通り「事業」のプロセスマップです。
したがって可視化する対象は、新規顧客を契約に導くまでの接点だけにとどまりません。製品を生産して届けるまでの流通プロセスや、購買後の満足度向上につなげていくためのアフターサポートプロセスなども描く対象とすることができます。
このように、事業全体をより俯瞰して可視化することで、「根っこの問題は何か」を見つけ、販促活動の改善だけにとどまらない、4P(Product:製品、Price:価格、place:流通、Promotion:販促)すべてに対して改善策を練ることにもつながります。
ただし、何のためにビジネスプロセスマップを描くのか、その目的に応じて可視化する対象範囲を絞り込むことも重要です。
ビジネスプロセスマップ作成が有効な業種・企業
ビジネスプロセスマップは特に以下のような業種業態の場合におすすめです。
カスタマージャーニーマップから一歩踏み込んで取り組むことで、より効果的にマーケティング活動を推進できます。
BtoB企業
- 購買の意思決定や製品サービス利用にあたって、顧客のなかで複数の部署が複雑にかかわりあっている
- オンライン媒体だけでなく、営業や設計など自社の各部門が顧客とのタッチポイントに密接に関係しあっている
高価格耐久消費財を扱っている業種(住宅会社や自動車ディーラー)
- 顧客の認知から意思決定プロセスが長い
- 顧客側の関係者が複数で、意思決定への影響が複雑である
アフターサポートが重要な商材を扱っている業種
- 購買後の「満足の維持」や「カスタマーサクセス」が解約防止につながる
ステークホルダーが複雑な公共機関、大学、病院など
- 目的や立場が異なる複数の顧客やステークホルダーとの関わり合いの中で事業が成り立っている
- 自社とステークホルダーだけでなく、ステークホルダー同士でも関係しあっており、その関係性も考慮したうえで自社の役割やウェブサイトの役割を定義する必要がある
ビジネスプロセスマップを作ることで取り組めること
ビジネスプロセスマップ作成に取り組むことで、次のような活動の推進ができます。
ビジネスプロセスマップ作成に取り組みたい方へ
いかがでしたでしょうか?
自社都合ではなく顧客起点で事業を俯瞰して見直し、組織内で分断されている活動、データ、システムを「つないでいく」ことは、デジタルを活用したマーケティング変革やDX推進に着手をする第一歩として最適で、そのための手法としてのビジネスプロセスマップがおすすめです。
取り組んでみたいという方むけに、当社ではビジネスプロセスマップ作成方法のレクチャーやワークショップファシリテーション、プロジェクト実践の伴走などをご支援しています。
ご興味のある方は、個別にオンライン説明もおこなっております。お気軽にご相談ください。
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ビジネスプロセスマップ活用
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- 編集長
- 谷川 雄亮
この記事の監修者
CMOとしてウェブマーケティングの大規模プロジェクトを伴走しています。その経験をもとに、ウェブ担当者としての仕事を体系化した「ウェブマネジメント講座」開発し、講師をしています。実務担当者から経営層まで、100社以上の企業に受講いただきました。ウェブマネジメント・アカデミーでは、みなさまが抱えている課題を一緒に解決できるようにサポートします。
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