競合分析のやり方-差別化ポイントを探る

 2022.11.15 2024.08.08
編集長
谷川 雄亮
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競合分析とは、自社のビジネスで競合する他社を調査によって特定し、自社と比較して相手の強みや弱みをあきらかにすることです。競合分析をおこなうことで、市場における自社のポジション自社の強み/弱みを知ることができ、競合他社との差別化につながるWeb戦略を練ることに役立ちます。

目次

    なぜ、競合分析が必要なのか?

    ビジネス戦略を練るときと同様、Webマーケティングで成功するためには競争相手をよく理解することがカギとなります。競合分析は、市場のなかでの自社のポジションや自社の強み/弱みを知ることができ、競合他社との差別化につながるWeb戦略を練ることに役立ちます。

    効果的な競合分析をおこなうための8ステップ

    競合分析を効果的におこなうための適切な分析手順を押さえておきましょう。おすすめの手順は以下の8ステップです。

    1. 競合分析をおこなう目的を決める
    2. 自社の事業や商材の顧客提供価値を理解する
    3. 調査対象とする競合他社をリストアップする
    4. 競合他社の事業や商品サービスの概要を調査する
    5. 深掘りして分析する競合他社を選定する
    6. フレームワークを用いて事業構造を比較分析する
    7. 競合他社のWebサイトを比較調査する
    8. 比較結果をふまえて、自社のWeb戦略を決定する

    それぞれのステップの実施方法について詳しくご紹介します。

    STEP1:競合分析をおこなう目的を決める

    「とりあえず競合調査してみる」では、体裁の良いレポートだけができ上がり、調査をした気になっただけで、成功確率がきわめて低くなります。

    この記事をご覧いただいているあなたが、競合調査や競合分析をしようと思った理由はなぜでしょうか?

    「どのような施策のための競合分析か」をあらかじめ定義しておくと、目的に沿った調査や分析ができます。

    競合分析をおこなう用途例は以下のようなものが考えられます。

    • 競合製品の売り方を考察して、新製品の販売戦略を練りたい
    • Webサイトのリニューアルをするにあたって要求整理をしたい
    • Web広告のコンバージョン率を高めるため、LP(ランディングページ)を見直したい

    「競合調査」と「競合分析」の違い

    「調査」と「分析」は似て非なる言葉です。

    「調査」とは、不明な点をあきらかにするために調べることをいいます。たとえば、競合他社がどのような商品をいくらで売っているのかを調べてあきらかにすることが調査です。

    一方、「分析」とは、ものごとを分解して(細かな要素に分けて)、その性質、構造などをあきらかにすることをいいます。類似する商品にもかかわらずA社は5万円で販売しており、B社は20万円で販売しているということに対して、「その違いはなぜなのか」「どのような構造で価格差は生まれているのか」など考察をすることが分析です。

    STEP2:自社の事業や商材の顧客提供価値を理解する

    競合分析を始める前に、比較対象となる自社の事業や商材がどのような顧客をターゲットとしており、どのような価値を提供しているのかを整理しましょう。

    自社の事業方針やターゲット顧客像があいまいなまま、「とりあえず他社のことを調べてみよう」というかたちで始めてしまうと、競合調査の観点がぼんやりしてしまうだけでなく、調査すべき対象を見誤ってしまいます。

    STEP3:調査対象とする競合他社をリストアップする

    分析対象を選定するために競合調査候補をリストアップします。以下のような方法を組み合わせてリストアップ作業をおこなうことがおすすめです。

    • 営業担当者に「営業現場でぶつかっていることが多いライバル企業」を聞く
    • 顧客アンケートをおこない「商品選定時に比較検討した他社の商品サービス」を聞く
    • 顧客が商品やサービスを探す際に使用しそうなキーワードで検索をしてみて、上位ヒットしたサイトをチェックして、競合になりそうかどうかを判定する

    Webマーケティングにおける競合他社はどこか?

    営業や販売現場でぶつかっている他社は、直接的な競合相手であり、分析対象となります。Webマーケティングにおける競合他社はそれだけはありません。「顧客が課題解決をするためネット検索をしているときに、検索上位にヒットしたWebサイト(運営している会社)」も競合他社です。そのような間接的な競合他社は、もしかしたらリアルな営業現場ではぶつかることは少なく、営業部門では注目されていないかもしれません。しかし、知らないうちにそのような直接的ではない競合他社に市場シェアを奪われてしまう可能性もあります。

    STEP4:競合他社の事業や商品サービスの概要を調査する

    分析対象候補をリストアップできたら、本格的に分析をする競合他社を選定するために基本情報を調査します。たとえば次のような方法で、競合各社の情報を集めます。

    Webサイトに掲載されている情報(IR情報など)を調べる

    競合他社が上場している場合、WebサイトのIRページに「中期経営計画」や「事業計画」が公開されています。これらの情報を入手することで、その会社がどこを目指して、何に取り組んでいるのかを知ることができます。

    競合他社の企業情報調査サービスを利用する

    IR情報だけでは不十分な場合や、公開情報が入手できない非上場企業の場合は、企業情報調査サービスを利用する方法もあります。
    代表的なサービスのひとつに、「SPEEDA」(https://jp.ub-speeda.com/)があります。SPEEDAでは世界中の企業情報、業界レポート、市場データ、ニュース、統計、M&A情報を入手できます。

    また、帝国データバンクが「COSMOSNET」(https://www.tdb.co.jp/lineup/cnet/index.html)で提供する信用調査報告書を入手すれば、財務情報だけでなく現況と展望を知ることができます。帝国データバンクのサービスは、営業担当の経験があれば、与信調査で利用したことがあるかもしれません。

    STEP5:深掘りして分析する競合他社を選定する

    競合他社の概要調査ができたら、そのなかから深掘りして分析や考察をする対象を選定します。

    現状での競合度合いだけでなく、自社の将来展望を見据えてベンチマークしておきたい企業をピックアップしてみることもおすすめです。

    STEP6:フレームワークを用いて事業構造を比較分析する

    深掘り分析をする対象を選定したら、自社および競合各社の事業や商材の違いを比較します。事業構造の比較分析に使える代表的なフレームワークを3つご紹介します。

    3C分析

    Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)の3つの観点について分析をおこなうフレームワークです。市場・自社・競合それぞれについて、ポジティブ/ネガティブの両側面を、客観的事実にもとづいて分析します。

    ※3C分析は日本の経営コンサルタントである大前研一氏が考案者。

    4P分析、8P分析

    売り手側の視点で製品やサービスを分析してマーケティング活動の実施方法を考えるフレームワークです。自社や競合各社の製品やサービスを4P/8Pで要素分解して比較検討することで各社の強みや弱みが整理できます。

    4P分析

    製品を分析する場合は4P分析を用います。4P分析は「Product(プロダクト:製品)」「Price(プライス:価格)」「Place(プレイス:流通)」「Promotion(プロモーション:販売促進)」それぞれの頭文字をとって4Pと呼びます。

    ※4P分析はアメリカのマーケティング学者であるジェローム・マッカーシー氏が考案者。

    8P分析

    製品ではなくサービスを売り手側の視点で分析したい場合は8P分析が有効です。

    ※8P分析はサービス・マーケティング研究の第一人者であるクリストファー・ラブロック氏とヨッヘン・ウィルツ氏が考案者。

    SWOT分析

    内部環境に関するStrength(強み)Weakness(弱み)と外部環境に関するOpportunity(機会)Threat(脅威)の観点でマーケティング戦略を練るフレームワークです。 3C分析や4P/8P分析をおこなったうえで、「競合他社に対する自社の強み」「競合他社に対する自社の弱み」「外部環境の変化がもたらす機会(Opportunities)」「外部環境の変化がもたらす脅威(Threats)」の4つの視点で分析をおこないます。

    STEP7:競合他社のWebサイトを比較調査する

    競合他社が実際にWebサイトでは、誰をターゲットにして、どのような訴求のしかたをしているのか、どのような情報発信をしているのかなどを調査します。

    いきなりWebサイトの比較から始めるのではなく、STEP6で事前に事業構造の違いを把握しておくことで、「●●社はなぜWebサイトでこのような打ち出し方をしているのか?」という背景についての考察を深めることにつながります。

    競合サイト比較調査は次のような方法があります。

    競合サイト比較表を作成して考察する

    自社サイトと競合サイトを比較する観点を決め、スプレッドシートなどを用いて比較表を作成します。比較項目例としては以下のようなものがあります。

    • ファーストビューで訴求しているキャッチコピー
    • 商材提供範囲
    • 価格帯
    • ターゲット顧客層
    • 主要コンテンツの掲載有無
    • ブランディングの方向性
    • サービス拡充に向けた特徴的なPR内容
    Webサイト比較表の項目例

    競合サイト調査ツールを利用する

    調査ツールを使うことで、競合他社が狙っているキーワードや流入元のチャネルなどさまざまな要素を確認することもできます。代表的な競合サイト調査ツールをいくつかご紹介します。

    上記のようなアクセス動向の調査ツールの他に、Internet Archive(https://archive.org/)というインターネット上に公開された過去のWebページを保存して無料公開しているWebサービスもあります。競合サイトの変遷をたどることで、競合他社が現在のWebサイトのつくり方にいたった背景を考察することができます。

    STEP8:比較結果をふまえて、自社のWeb戦略を決定する

    競合各社の事業や商材の強み/弱みの考察と、競合各社がWebサイトでそれをどのように展開しているのかを分析ができたら、その内容をふまえて自社のWeb戦略を考えます。

    差別化戦略シートを使って打ち出し方を練り、自社サイトではどのような見せ方をすると効果的に差別化ができるのか、どのような施策を実施して集客をすると効果的かなどを考えてみると、見落としていた自社商材の良さに気づくことができるかもしれません。

    差別化戦略シートを作成する

    まとめ

    時間や予算には限りがあるため、すべてを手順通りにやることは難しいかもしれません。状況次第では手順の一部を省略したり、簡易化したりといった判断も必要になります。

    ただし、「いきなり競合他社サイトを眺めてみる」から始めた結果から生まれる施策案は他社の真似事にとどまってしまいます。競合サイトをチェックし始める前に、競合各社の事業そのものがどうなっているのか?についても目を向けてみましょう。

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    編集長
    谷川 雄亮

    この記事の監修者

    CMOとしてウェブマーケティングの大規模プロジェクトを伴走しています。その経験をもとに、ウェブ担当者としての仕事を体系化した「ウェブマネジメント講座」開発し、講師をしています。実務担当者から経営層まで、100社以上の企業に受講いただきました。ウェブマネジメント・アカデミーでは、みなさまが抱えている課題を一緒に解決できるようにサポートします。

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