Webサイト運営に必要なスキルとは?~7つの視点から、質の高いWebサイトを作り上げるコツを学ぶ~
Webサイト運営に必要なスキルを考えるときに、どんな業務があるかを知識として把握しただけでは、成果がでるサイト運営にはなかなかつなげられません。 企業の Web 担当者として主体的におこなう割合が高い業務領域と、 専門性が必要になる部分(例えば Web制作は制作会社に、 システム構築はシステム会社に、 広告の運用は広告代理店など)は専門業者に任せ、うまくそのスキルを引き出して成果を上げていく領域をうまく組み合わせる必要があります。役割分担のしかた、外部業者との円滑で齟齬のないコミュニケーションの取り方などで、サイトの質はかわります。 そこで今回は、7つの視点から、 Webサイトの質を上げるコツをご紹介します。
1.「企画立案」
どんなターゲット像に対して、どのようなWeb活用の施策立案をし、何を達成したいのかを練る段階が企画立案です。
そのためには、各部署からヒアリングをしてどんなことをWebサイトで表現したいのか調査したり、現状課題を整理したり、マーケティングデータやいろいろな動向のデータを調べたりすることが考えられます。
実際には、企画会社や広告代理店に委託をして企画をお願いすることもあるでしょう。
ただしその場合も丸投げして「何か企画ください」という方法では成果につながりません。自社の経営計画や事業計画マーケティング計画に照らし合わせて、何をおこなうべきかを考える必要があります。
そのためにも、自社の戦略をいかに深く理解してもらえるかを前提とした企画になっているかどうかを見極めることが求められます。
企画立案での2つの注意点
2.「設計」
自社Webサイトの、どの位置にどんなページを作るかという「サイトの構造設計」をしたり、実際に注文につなげるためのゴールまでの導線や申し込みボタンなどの「反応装置の設計」をしたりする工程です。
最近では、閲覧履歴や会員情報など、さまざまな情報にもとづいてその人に合ったWebサイトの見せ方をする(パーソナライズをさせる)ことの重要度も増していますので、どのようにパーソナライズする条件を作っていくのかという設計も、この領域に入ってきます。
また、ここでは、サイトそのものの設計だけではなく、内部プロセスの設計も含まれます。例えば、業務フロー設計や社内承認を得る手順の設計などが該当します。
「設計」というのはひとつ前の章で取り上げた「企画」を受けて具体的な実現方法を図にまとめていく工程です。
専門的な技術面の知見も求められますので、システムに関することであればシステムエンジニアに任せて具体的に設計書を作ってもらったり仕様書を作ってもらったりする必要性もあるでしょう。
しかしそのときにも、成果を生み出すための良い設計ができるかどうかは、適切な要求提示が規格にもとづいてできているかによります。
設計がうまくされていないまま制作工程に進んでしまい、意図したものと違ってしまった、結果作り直しの必要に迫られた、という失敗事例はよく耳にする話です。
原因としては、設計書そのものを作る前に、そもそも何がしたいのか、どこに課題があるのかを業者側に的確に伝えきれていなかったために、出来上がってきた設計書に仕様がうまく反映されていないことが考えられます。
発注者の立場として、どんなことを要求提示したら良い設計書を作成してもらえるか、私たちは何をしたいと考えているのかを、できる限り具体的に伝えることが求められます。
3.「制作」
WebサイトのデザインやHTMLを作ったり、システム更新システムを使っていればそこにコンテンツを登録したり、マーケティングツールや解析ツールなどの各種ツールの設定をする工程です。
コンテンツ登録に関しては、最近は、CMS (コンテンツマネジメントシステム)の専門的なHTMLの知識がない方でも、ブログを更新する感覚でページを作成できるシステムを企業サイトに導入し、運営しているケースもあります。
これにより、原稿集めからコンテンツ登録をして Webページを作る上げるところまでの一連の流れに、専門家をいっさい介すことなく、社内で役割分担をして制作活動をおこなっていくという形態が増えていますが、気をつけなければならないこととして、品質基準を明確に定められているかどうかが挙げられます。
デザインや画像を作成する、写真撮影をするときなど、個人的な好みや趣味嗜好で進めると、サイトやページによって統一感がない状態になってしまいます。
また、原稿を書く、文章を書く場合の使用用語ルールが会社で定まっているかも重要です。
執筆者によって、同じことを指しているのに違う単語を使ったり、漢字と平仮名の使われ方が違ったりすると、サイト全体の統一感がなく、ブランドイメージを悪くすることにつながってきてしまうからです。
これらを防ぐためにも、用語の使用ルールを定めていく、校正の方法やルールも決めておくと、会社としての適切な基準にそった作り方ができます。そのためにも、品質ガイドラインを定めていくことは、製作工程においてポイントになるでしょう。
これは社内だけのことではなく、デザイン会社や制作会社など、外部業者に任せるときも同じです。
制作会社によってデザインの指向性や文章の使い方作り方が大きく異なることも、この業界の特色です。ときには自分たちで作った基準を「この基準にもとづいて作ってください」と、発注時にあらかじめ業者に伝えることも必要かもしれません。
4.「システムやインフラ」
MA(マーケティングオートメーション)を使って、顧客に対して自動でメールを送ったり、見ているページの状況に合わせてポップアップを出してゴールに導いたりすることもシステムの一例です。さまざまなツールによって顧客との注文や顧客体験を増やすことに技術を使うことが増えています。
このシステムやインフラの領域、非常に専門性が高く、専門用語が飛び交うような業務です。おそらく専門業者に任せるということが高い業務領域になるでしょう。また、特にこの10年間、20年間のなかで変化が大きかった領域でもあります。システムの規模感や注意しなければいけないセキュリティレベルが高度になってしまったからです。
20年前のWebサイトは、会社紹介やサービス紹介だけの役割にとどまっていることが多かったので、100万円200万円規模で簡単にシステムを作ることも当たり前でした。
それに比べ現在では、Webサイトの役割は多岐にわたっているので、セキュリティリスクも高くなっています。そこに求められる機能のレベルもどんどん上がっているので、カバーしなければいけない領域が増えた結果、数千万や場合によっては数億円規模でWebに関するシステムを開発するプロジェクトも増えているのです。
ここでよく起こる問題の1つに、システムを使うことで実現したいことに対しての必要な工数、期間や費用などのずれがあります。
準備不足のままプロジェクトがスタートした結果、中途半端なシステムを運用することになり人的負荷がでてしまうなどは、代表例です。このようなことがおきないようにする視点も、システム導入の計画をするときには必要です。
またDX(デジタル・トランスフォーメーション)の流れもあって、システムやインフラにかかわる部署や業者との関係設定に、近年変化が出ています。
かつてはシステム導入やインフラ導入はシステム部門を通した発注をシステム会社が受注して成果物を納品するような受発注の仕組みでした。
しかし近年では業務にかかわる部門が多くなっており、システム部ではなく営業部や顧客サポート部などが直接システム導入検討に意思決定権を持つことも増えてきています。
業者側も、単純に受発注の関係ではなく、より密接な関係性結び一緒にビジネス目標を達成するというスタンスも多くあります。 この工程にたずさわる予定がある方は、「何を作るか」の前に「誰がどういったかたちでなぜ作るのか、どのようなプロジェクト体制をとるのか」ということも、ぜひ意識をしてみてください。
5.「集客」
集客というと、広告が思い浮かぶかもしれません。
例えば、検索エンジンに連動する広告、動画広告、ソーシャルメディアを使った広告など、いろいろなプロモーション方法でサイトに見込み顧客を呼び込む方法です。
この広告の領域も技術の多様化によってプロモーション手法がどんどん分岐しています。
発注者の立場からしてみると、それぞれの領域に強い広告代理店などに分散発注をして、できる限りそれぞれの専門領域のノウハウを引き出す依頼のしかたを考えるかもしれません。その場合、それぞれ別の会社にお願いをした広告手法が実は重複していたり、戦略が一致していなかったり、予算計画の最適化ができなかったりという問題が起きないようにコントロールする必要があります。
全体を通して統括管理をするときに、どんなことを発注者としてやるのかというところも注意をしながら、この発注体制を考えていく必要があるでしょう。
リスティング広告に関しては「リスティング広告(Google広告)インハウス化をおすすめする理由」でも紹介していますのでご覧ください。
また、忘れてはならないのは、それはそもそも広告を出すことや集客をすること自体が目的ではなくて、そこから成果を上げることが求められている役割です。
広告や集客をするときに、成果を上げるにはどこにお金をかけるのか、そこが明確に定まった状態で戦術を選べているでしょうか。
貴重な資源を無駄にしないためにも、どのようなターゲットに向けてどのような効果を得るためにこの手段を使うのかを明確に定めておきましょう。
その効果に関しては、3つの考え方があります。
インプレッション効果
1つは「インプレッション効果」。広告が見られることによってユーザーに認知がされる、つまり、商品やサービス媒体のことを知ってもらう状態になることです。
例えばヤフーやグーグルなどの検索エンジンにバナー広告貼り、それを見てもらうことで商品を知ってもらう。クリックしてもらえなくてもバナーが目に触れることによってブランド認知がされる。そういったところを目指すものです。
トラフィック効果
2つ目の効果が「トラフィック効果」。認知してもらうだけでなく、そこからクリックしてサイトに来てもらうところまでを目指しています。
レスポンス効果
最後が「レスポンス効果」。これはクリックしてもらって自社サイトに来てもらうだけではなく、そこからユーザーに具体的に反応してもらおうというものです。
例えば、資料ダウンロード、イベントやセミナー参加申し込みなどがそれにあたります。
集客については、「効果的なウェブ集客方法まとめ」でも紹介していますのでご覧ください。
6.「ウェブ解析・効果検証」
戦略的にPDCAサイクルを回していく上で非常に重要な業務領域ですが、どのデータを活用するのかについては、判断が難しいところです。技術が増え、さまざまなことができるようになった結果、多様すぎてどこから手をつけていいかわからないということが増えたからです。
そこでシンプルに「仮説立証」と「対策立案」で考えてみましょう。
まずそもそもデータを集めるにあたって、やみくもにデータを集めるわけではなく、「どのようなデータからどのような反応があるか」「どのような成果が出たのかなどの見極めに役立つデータは何か」を考えてみてください。
企画の設計段階で施策を決めたとき、ユーザーはどんな反応をするだろうかという仮説をあらかじめ持っておくってことも必要です。この仮説が妥当なのかどうかということを検証するためにデータを活用し、想像を膨らませることが非常に重要なのです。
その想像を膨らませたあとに、情報をどう集めるか、というところが解析のデータ収集になります。そして、集められたデータの考察をしていきます。
ただ単純に 「PV があがりました」「このページの閲覧数が落ちましたね、直帰率が下がってきましたね」だけを並べててるだけでは、意味がありません。
データをかき集めてデータを並べ立てるだけでは、体重測定をしているだけになってしまいます。体重をはかっただけではダイエットにはつながらないですよね。結果を基に、次にどういうことをやったらもともと目指していた成果がより高まるかということを考える必要があります。データ元に考察をして対策案を練る、そこでの想像力が大切です。
この想像力を鍛えるためには、データに慣れ親しむ、習慣化することを心がけるといいでしょう。おすすめできるアプリケーションのひとつに、 googleデータポータルというものがあります。
皆さんの会社や日常生活で目を通す必要があるものをあらかじめセットアップをしておくとそのデータがリアルタイムでかわってレポートが自動で出てくるものです。そういったものをうまく活用することによって気軽にデータに向き合ことを習慣化してみると良いでしょう。
7.「マネジメント」
このマネジメントのスキルが今回の7つのなかで最も重要になります。マネジメントに関することと言えば、会社の事業や目的をしっかり理解をした上で計画をつくることや、予算を考えること、運営チームを作ること、会議の進行をすることなどです。
これ以外の6つで取り上げた専門的な技術や手法は、専門家に発注すれば解決できることもたくさんあります。ただ、そもそも社内での意見を取りまとめたり、企業としての方向性を決めたりという日々の判断の積み重ねが、実際に正しく成果に向かっているかどうかにかかってきます。
ですから、このマネジメント領域は社内のWeb担当者にしか担えない領域です。このような観点から、マネジメントをしていくためにどんなことが必要なのか、どんなマインドでやるのかなどを意識してみてください。
8.Web担当者に求められる役割は変化している
下の図にあるように、90年代はサイト運営は総務部の片手間仕事である場合が多くありました。そこから広報的な役割が2000年代に増え、さらに2010年代になると具体的な営業活動や見込み客を開拓にまで役割が広がりました。
さらに2020年になってから特にDXという言葉で、ビジネスモデルそのものをWebやITの力を使って変えていこうという考えが生まれてきます。
このように、Webサイトに求められる役割や影響が年々増えてた結果、10年、20年前と同じ運営体制が通用しない状況になっています。それにともない、皆様自身の業務を個人としても考える一方、会社としての体制を考えていくということが求められるようになってきています。
他にも以前と比べてサイト運営が高度・複雑になった要因はありますか?
以前は広報の方が制作会社に丸投げしてページが公開できたことも多く、そこは1対1の関係で成り立っていることがほとんどでした。
しかしWeb活用が会社全体でおこなわれている現在、かかわる人たちが、社内だけでも経営部、IR部、情報システム部門…とたくさんあり、加えて社外にもSEO会社、印刷会社、経営コンサルタント…というように、範囲が広がっています。
Webサイト構築や運営にかかわる人たちとうまく協力しながら意識統一をして役割分担することは、マネジメントスキルを必要とする部分にもなり、高度化した要因ですね。
1つ目は「経営の観点を持って事業戦略に関与すること」。
自社事業をしっかり理解し、そしてどこでWebサイトを活用するのかというところしっかりと計画が立てられるスキルです。
他部門を動かす、他部門のサポートになるようなWebサイト運営とはどういうものだろう、ということを考えてみてください。
運営は一人ではできません。
チームとして複数でまわしていくためには、業務にたずさわる一人ひとりがリーダーシップを発揮できるリーダーになっていかなければならないのです。
リーダーシップを高めることでまったく経験がない方でも成果を上げているような事例もたくさんありますよ。
そう考えると、テクニカル知識や経験がないからということで不安になる必要はないかもしれませんね。
9.企業のウェブサイト運営に必要な力を身につける専門講座
ウェブマネジメント・アカデミーを運営しているあやとりでは、「ウェブマネジメント講座」というもので企業のウェブサイト運営に必要な「マネジメント力」「マーケティング力」「チームビルディング力」をサポートしています。
「事業の成果につなげる」ウェブ活用をするために、企業内のWebサイト運営担当者には、多くの知識と高度なマネジメントスキルとともに判断力を求められますが、それらを体系的に習得できる専門講座です。
自社Web活用をよりよくするために、ご活用ください。
- 株式会社あやとり
マーケティング部 - 鈴木 英美
この記事の監修者
ウェブマネジメント・アカデミー立ち上げメンバーの一人です。コンテンツ作成やメルマガ関係、インサイドセールス分野に携わりながら、このサイトのウェブ担当者として、幅広く勉強しています。
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